★もきゅもきゅもみゅーん

実はこの色見本帳は、人間の肌の色で構成されています。



ダビデがブラジルに訪問した際、その多国籍多人種の街並みに驚き、そして自分が思う以上に肌の色があることに気づいたそうです。
彼は現地で見つけた 40歳～50歳代の男性の背中の 15 センチをスキャンし、扇形の見本帳を作成。それが先の画像のものになりますね。
ちなみに「Nuancier」は正確な単語では「Nuancier Couleur」で、フランス語で「色見本」となります。

その後、塗料メーカーで数式に置き換えられ、カラーコードを与えられ 、ペンキ塗料の40缶となり、「NAM（Museu de Arte Moderna in Salvador da Bahia）」日本名的にはバイーア現代美術館の壁を塗るという作品になりました。

ブラジルは他国よりも肌の色を気にして、誰もが彼の肌の色を主張し肌の色を誇りに思うことができる。
Brazil has a better attitude to skin colour than other nations. Everyone can claim his skin colour and be proud.

-- Pierre David

多くの人がいて、それぞれが持つ肌の色は、こんなにも多彩。
しかし世界はバイナリ的に「白」か「黒」としか判別しようとしない。

この地、バイーアは奴隷貿易の中心地であったポルトガル領ブラジルの最初の首都であり、1,070万人ものアフリカ人奴隷を招き入れた最大の港湾都市。
1763年にリオデジャネイロへ首都が移転し、経済の中心から取り残されるようになっても、時が止まったように古き悪しき風習が残ります。
そして黒い肌の子供は、白肌の子供より3倍殺される可能性が高くなります。

「Nuancier」に込められたメッセージは、人種差別への反撃。

私たちがかっての奴隷のように工場製品であったなら、Tシャツのカラー展開のように分類されたのでしょうか。色で人を分類されるのでしょうか。


さて、ここまで書くと、人種差別って悪いね、という話になると思います。
しかし、この作品のデザインコンセプトは、そんな使い古されたメッセージなのでしょうか。

実は「人種差別」の概念には、「人種差別する人そのものの問題」と「人種差別の概念を考えずにただ悪いことだとする問題」という２つの問題があります。
「黒」は「白」より可哀想、という刷り込みのような脅迫概念があり、イコール人種差別が悪いという図式で考えている人がいるのです。黒色を悪く思う人がいるから助けてあげましょう、という偽善者的な考えの前程があるのです。
しかしそれは間違いで、本人たちは自分の肌の色にプライドを持っています。「差別」があるようなランクは存在しないはずなのです。
ブラックは、悪くない。

彼らは彼女たちは、自分の肌の色にプライドを持っている。
そう思うことで、私たちの価値観や優しさの方向性は一変します。

商品として同じ棚に並べば、全ては色違いで同じ価値。
その色には、その色なりの魅力がある。

このグラデーションの中で、わたしたちは自分の世界をどう捉えるのか。
ダビデのデザイン「Nuancier」は問いかけます。