MINE KAFON を構成するのは、生分解性プラスチックと竹。生分解性プラスチックは仕様状態ではプラスチックと同等の機能を有し、仕様後には自然界の微生物によって分解されるというもので、砂漠を転がした後の環境への問題も考慮されています。
構造はシンプルで、子供でも組立てられるほど簡素化されています。竹は球体の中心から放射状に伸び、先端にはプラスチック円盤が取り付けられています。この円盤が球体の表面での「足」となり、人の代わりに地雷を踏んでくれるのです。
地雷を踏んだ場合、MINE KAFON はその足(と、その周辺)を吹き飛ばし、最小限のダメージに留めて、そのまま球面が保てなくなり自走できなくなるまで風力によって転がり続けます。
さらに GPS 機能を搭載しており、それぞれの MINE KAFON が通過した経路や現在位置を把握することができるという仕組みです。
「MINE KAFON」1個の生産コストは、4600円。
これに対し従来の地雷撤去装置は、100万円。
今までの 200分の1のコストで量産可能であり、環境面を考慮する必要が無い、そして最大の理由「人間にとって必要とされる」というすべての面で優れた評価をされています。
開発に至るまでの経緯を、マスード・ハサニ自身が子供時代を振り返って語ります。
5歳の時に内戦が絶え間なく続くアフガニスタンに移住してきたたこと。
兄と一緒に高い山に囲まれた盆地で遊んだこと。
そこは山に囲まれているため年がら年中風が強く、風に吹かれてころころと転がる玩具をよく作り、近所の子ら含めて競争したこと。
玩具は工夫に工夫が重ねられ、風の力を強く受けるように転がる進化を遂げていった。
いつしか、玩具は予想を上回るように速く遠く転がって、子供の足では追いつけなくなった。
そしてある日、「地雷地帯につき立ち入り禁止」の看板の先へと超えた。
ハサニとその友人らは、遠く転がっていく玩具を、ただ黙って眺めるしかなかった。
MINE KAFON の自走するアイデアは、その時に生まれたもの。
ハサニはオランダのアイントホーヘン・デザイン学校の卒業制作として、この子供時代の玩具を大きくしたものを制作したのです。
(ハサニの父親が地雷事故によって亡くなっているという情報ソースもあり)
子供時代の想い出の玩具が、芸術作品として評価され、また人命を救うという、人々の未来への希望となっていく。
類を見ないプロダクトが重いテーマを背負っていくという、かなり珍しいケースのアートですが、これほどまでに人の心を打ち昇華されていった芸術作品というのを見たことがないです。
使用方法は、現地で組み立てて転がすだけ。材料は軽量で持ち運びも楽。
デザイン面を見てみると想像ですが、球体になっている構造のため、自重が全て接地面にかかり、そのため軽量でも「地雷のスイッチが入る」程度の自重を確保しているようです。
ただ、この球体構造では設置面が少なく、全ての地面を調査するには相当の時間とコストがかかりそうなデメリットが思いつきますが・・・。コンセプトモデルとしては素晴らしいですが、デザインを考えていくと、あんまり現実的ではないかもですね。人の心を揺さぶるコンセプトなので、商品にしたらバカ売れしそうですけど。
来月にはパリでプロジェクトとしてのお披露目展も決定しています。
また3月には、ニューヨークの MOMA のコレクションに加えられる予定だそうです。
ハサニの公式サイトでは、MINE KAFON の詳しい情報があります。
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Massoud Hassani
http://www.massoudhassani.blogspot.jp/