IT企業へ就職するデザイナーのシラバス(授業計画表)

2018年05月08日 18:24

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IT企業へ就職するデザイナーのシラバス(授業計画表)

古いファイルを探していたらデザイン学校で外部講師したときのシラバス(授業計画表)が出てきて、もう使うこともないので、このタイミングでしらっと公開。

ちなみにその時はクラスに女子が多いのは想像できたのですが、授業中に突然「プリンタを使わせてほしい」と普通に教室に入ってくる子とかいてジェネレーションギャップなのか女子ならではの許される行動なのかに驚きました。

IT企業へ就職するデザイナーのシラバス(授業計画表)


学習のねらい
『幅広いWEBデザインの基礎を身につける。WEBでの表現へ興味をもたせ、グラフィックだけではなく、プログラムやサーバーなどの苦手意識を克服し、敷居を低くし独学できるようにする。1人でデザインからコーディングまでできるノウハウを学ぶ。』

現代っ子はデザインといっても「絵を描きたい」というグラフィッカー志望の子が多いそうです。
僕の時代はインターネットが面白い時代で、Flash でぬるぬる動かしたり、スクリプトを組んでインタラクションコンテンツを作ったりするのが楽しく WEB は最先端で驚きに満ちていたのですが。今は WEB では面白いものが無いし、「プログラム難しくてやりたくない」という子も増えているのだそう。
授業が15コマしか無かったので短時間で習得できるように、「理解する」に特化して、理解した後でインターネット等で検索して詳細を独学できるようにすることを想定しました。


学習成果
即戦力として、または将来性を買われて WEB 制作業務でリクルート可能な知識と基礎技術の確立。

企業で面接等も担当していた経験上、新卒で採用しようと考える学生に必要な能力を把握しているに決まっているので。

評価基準
成長度合い30%、成果物の品質評価40%、成果物の創造性30%

生徒に点数(成績)を付けたことが無いので基準というのにすごい悩みました。あと同じ内容を大人数に教えて教室内で差が出るという現実も理解できないのですが、よく考えたら自分もクラスで先生の話を聞かなくて落ちこぼれていたから納得。
新卒採用だとどう考えても「将来性」しか採用判断が無いのですが、「学校での点数」と考えて評価基準を考えました。


授業内容(合計15コマ)
  1. WEB と紙媒体のデザイナーの違い、「WEBデザイン」の面白さ。 IoT(モノのインターネット)。

  2. Adobe Dreamweaver の使い方。ボタンの位置を確認しながら、できることや機能の説明。

  3. HTML と CSS の役割。「コード」と「デザイン」を分割する意味と、それぞれの基礎知識。GIFとJPGの違い。

  4. WEBの技術(javascript、jQuery、boostrap、など)。作った HTML に動きを追加してみる。

  5. レスポンシブ、パララックス、スマホファースト。(当時の)流行の最新技術と WEB の将来。

  6. jQuery ライブラリ 利用の仕方。デザイナーでもできるスクリプト。DW を使わないでメモ帳でコードを書いてみる。

  7. アクセシビリティとユーザビリティ。WEB の心理学と UI理論、ファーストビュー。

  8. ブログでポートフォリオ制作。日々をアップして、リクルートで勉強していることや作品をアピールできる場を作る。

  9. ブログテンプレート制作。ここまでの技術で、実際に開設したブログのカスタマイズを行う。(創造性の確認)

  10. SEOに適した WEB構造と、アクセス解析。アクセスアップのテクニック。

  11. 実際のWEB制作での流れ。提案、デザインからコーディング。ヒアリングの重要性。見積の仕方・考え方。

  12. 課題サイトをリニューアル提案。サイトの分析。サイトマップ作成方法。

  13. 課題企画を新規サイト提案(1)。オリエンテーション、ページ構成、ワイヤーフレーム、提案書

  14. 課題企画を新規サイト提案(2)。プレゼン実践。(実務の触りの経験)

  15. 就職のためのスキルと面接対策。SNS対策。WEB業界の実情。(リクルート対策)


こんな感じで、IT企業でのデザイナーになるために必要なことをやってた。内容的には企業内で新人の子に教えていくものの簡易版。僕は自分と同じことしかできない僕のコピーを作るのが嫌だったので(できれば自分が作れないものが作れる人が、自分にも会社にも都合が良い)、押し付けではなく教えたことについて「自分で考えられる」ようにすることを気を付けました。正解なんてないし。

IT企業だと UI に対する知識とかもっと必要だなと思っていたけど、メーカー内のインハウスデザイナーとして働いてみると、別次元のもの(物理とか市場知識)が改めて必要だなと思いました。

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yasukawa
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浜松在住クリエイター&デザイナーが仕事のことについて頑張って書いてみる。
【認知心理学、コミュニケーションデザイン、情報デザイン、UI/UX、インフォメーションアーキテクト、サイネージ(Scala)、3Dモデリング、データベースアプリ構築(FlileMaker)、Flash Script 2.0&3.0、サーバ構築(Linux)、IoTセンサー&電子工作(Arduino)
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