アイコンに気づく人と、デザイナーとの考え方の違い

yasukawa

2015年06月04日 20:27



スマホや携帯電話で、電話のかけかたが分からない、という人はいるでしょうか?
いそうだし、いなさそうだけど。

ガラケーやフューチャーフォンと呼ばれる「携帯電話」に比べ、「スマートフォン」と呼ばれるイマドキの多機能携帯電話には、普段使われないような機能がいっぱい。
僕もマニュアルを読み込んでいないので、あまり使ったことのない機能などあります。あれば便利というシーンはありますけどね。

で、冒頭の質問なのですが、当たり前の話ですけど、10割に近い確率で自分のスマホで電話かけられると思います。
で、自分のスマホの「電話をかける」という機能のアイコンを確認してみてください。


アイコンが受話器ですね。

ここで、ふと疑問を持った人は辛辣な批評ができる人か、もしくは問題解決のセンスがある人なのですが。
未だに固定電話の受話器をモチーフにしたアイコンなんですよね。

固定電話がなくなりかけている、この時代に。
固定電話を持たない人が増えている、この時代に。

その当事者ともいえるスマホが、固定電話の受話器のアイコン。

そもそも今この手に持って電話をかけようとしているモノがスマートフォンだというのに。
お前は何者だ? という流れになりますね。

この手の UI デザインの問題提唱は今に始まったことではなく、デザイン業界ではワークショップやセミナーがあれば、わんさかとこれ関係の話が出てきます。おそらく学生時代に授業でやった人も多いかもです。

デザインという学問の中で、もっとも多く問題とされているのが、「保存」アイコンだと思います。
みなさん、何気なく保存する際にアイコンボタンを押しているのだと思うのですが、現在、フロッピーディスクは使われていません。それどころか、フロッピーディスクを知らない子供たちの方が多いのが現状です。



Microsoft の Excel も。



Adobe も最新作の Acrobat DC で、フラットデザインの保存アイコンを披露しています。

子供たちは、このアイコンなんだろう? と思いながら、使っていることでしょう。
その昔、パソコンの世界では、保存する媒体といえばフロッピーディスクというのが通説でした。
UI(ユーザーインターフェース)が成熟していない時代において、例えば「削除はゴミ箱に捨てる」という現実のインターフェースを模倣する「スキュオモーフィック・デザイン」という概念は、非常に分かりやすいものでした。

しかし時代が変わっていくうちにつれ、認知心理学でいうメタファが通じない状況になり、「受話器のアイコン」や「保存のアイコン」に代表されるデザインの問題が勃発していることになります。
多くの(新しいもの好きの血気盛んな)デザイナーが果敢に挑み、そして世界を変えるには至らず、現在に至り、問題は問題とされ、多くの UI スペシャリストたちがプンスカしているのですが。

果たしてコレ、変更すべきなのかな、という風に僕は考えます。

 青信号はすすめ、赤信号は止まれ。
 自転車の乗り方。
 ポストは赤い。
 異性の口説き方。

これらは、勉強したのではなく、なんとなく知っていた、というものではないでしょうか。
受話器やフロッピーディスクのアイコンも、そのレベルに達しているものだと思います。

デザインとしてのアイコンには、いろんな考え方があるとは思うのですが、世の中にはあまりにも「デザイナーごっこ」が多すぎなような。破壊されていない事象に対して、あまりにも悪性デザインだという声が多く、余計に世界をややこしくしているように思うのです。

確かにデザインは、このような問題を解決していくようなものだと思うのですが、成果物が「迷走して時間がかかったもの」であるなら、それはデザインされたものではないと考えます。アーティストのコンセプトモデルというなら、それは自分好みで面白いものと思えばいいけれど。

そういえば、WEBでは「保存」という概念も変貌してきて、そこは面白いところですね。
クラウドという概念が登場して以来、クラウドがなんなのか正体については霧の中ですが、そこに入れるデータ自体は「同期」なのか「ダウンロード」なのかとハッキリと分かれたというか、違いが出たというか。

いま、新しいテンプレートを作っていて。
設計している以上、いろいろ入出力にまで考えが及んでしまうのですが、データの持ち方一つにとっても正解のない考え方があって、いろいろ悩みます。


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