コミュニティ・デザイン

yasukawa

2011年03月16日 10:42

使い手が使いやすいようにデザインされたものは多数ありますが、プロジェクト自体の進め方をデザインした地域コミュニティ研究として、面白い事例があります。

英国スコットランドのエディンバラ市のある街区にて、ヨーロッパ最大手の家電メーカー「フィリップス」社のデザイン部門が手掛けたプロジェクト「LiMe(Living Memory)」がそれ。

■Future Communities:Living Memory(詳細)
http://www.kanshin.jp/chizai/?mode=keyword&id=98398

このプロジェクトは EU が資金提供したインタフェース研究(インテリジェント・インフォメーション・インターフェース)のひとつとして実施され、マルチメディア・インターフェイスによる、家庭や公共空間向けのコミュニケーション端末を導入する、というのが目標。

『生きている記憶』という壮大な名前をもったこのプロジェクトは、地域コミュニティの情報環境を補完することを目的として、初期段階から地域住民の意見を大幅に取り入れて進行しました。
そのビジョンは、「地域社会や近隣の人々が、それぞれの知識や経験を共有する可能性を提供しそれを支える新しいツールの開発」であり、デザインプロセスの最初から住民を巻き込み、また社会科学者や情報エンジニア、デザイナーたちが、まさに異分野を横断するコミュニティを組織しながらプロジェクトが進められた。
※内容の詳細は上記リンク先にあります。

日本の各地の官庁主導で行われた数多くの失敗例と決定的に違ったことは沢山ある。

・地域にとって一番の情報資源は人間自身だと設定したこと。
・地域には情報活動の核となる結節点が『新規に作らなくても』存在していると認識したこと。
・情報にアクセスする行動には、ストーリーや意味がある(時間の流れや構造がある)としたこと。

日本の官庁のプロジェクトとして実際に行われた地域に密着した情報提供という名目で行われた情報化投資は、地域住民を「情報を消費する人(ユーザー)」と考え、新規情報を投入することばかり囚われてしまっていたといえる。

だからこそ、LiMe プロジェクトの「地域コミュニティを尊重し、拡張する」という考え方は素晴らしい。

基本、デザインが設計を意味するものとしても、結局はその成果物がゴールになるものですが、プロジェクト自体が情報デザインそのものだったという意欲的な事例といえます。


■フィリップス社
http://www.philips.co.jp/
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